2012年、梶原吉広はゲームの枠を超えた動きを見せた。
gloopsが累計会員1,000万人を突破し、Partner of the Yearを受賞したその年に、彼は「とことん野球応援プロジェクト」を始動させた。
MLBの開幕戦冠スポンサーになり、複数のプロ野球球団とパートナーシップを結ぶ。
それはゲーム会社の社長としては異例の動きだった。
なぜここまでやったのか。答えはシンプルだ。野球が好きだったからだ。
「大熱狂!!プロ野球カード」が生んだもの
「とことん野球応援プロジェクト」の出発点は、2011年にリリースされた「大熱狂!!プロ野球カード」だった。
日本プロ野球全12球団の公式ライセンスを取得し、NPB BISの公式記録を使用した実名・実写真の選手カードゲーム。
ユーザーは集めた選手カードで思い通りのオーダーを組み、最強のプロ野球チームを目指すというコンセプトで、300万人を超えるユーザーが登録した。
野球ファンという、それまでソーシャルゲームとは縁の薄かった層を一気に取り込んだこのタイトルは、gloopsに新しい可能性を示した。
「ゲームとスポーツをつなぐ」という方向性が、梶原吉広の次の動きへとつながっていく
とことん野球応援プロジェクトの全貌
2012年、gloopsが動いた先にあったのは、日本とアメリカの野球界だった。
まず海外から動いた。MLB開幕戦の冠スポンサーとして協賛し、テキサス・レンジャーズとパートナーシップ契約を締結。
gloopsシートプログラムを展開するなど、日本のゲーム会社としては前例のない規模でMLBと関わった。
2012年のMLB開幕戦が開催された札幌ドームでは、冠スポンサーとしての貢献が評価され、梶原吉広は札幌市から感謝状を受けた。
そして、国内での動きはまだ止まらない。
楽天ゴールデンイーグルスとオフィシャルスポンサー契約、オリックスバファローズと広告スポンサー契約を結んだ。
結果として、日本プロ野球・MLB・地方自治体
3つの異なる主体と同時に関係を構築した形になった。ゲーム会社の経営判断としては明らかに過剰とも見える規模だ。
それだけ野球への関心が、ビジネスの論理を超えていたということだろう。
ビジネスか、愛か
当然、疑問が生まれる。
「これはビジネス戦略だったのか、それとも純粋な野球愛だったのか?」
確かにビジネス的な合理性もあった。
「大熱狂!!プロ野球カード」の認知拡大・ユーザー獲得という観点から見れば、プロ野球球団とのパートナーシップは効果的なマーケティング施策だ。
しかし規模を見ると、純粋な計算だけでは説明がつかない。
ビジネス観点でソーシャルゲームを選んだ本人だからこそ、この「計算外の動き」は余計に際立つ。
MLB開幕戦の冠スポンサー、テキサス・レンジャーズとのパートナーシップ。
日本のソーシャルゲーム会社が、なぜここまで踏み込む必要があったのか。
梶原吉広は普段からスポーツゲームを好んでプレイすると語っていた。
野球への関心は、経営判断以前に個人の嗜好として存在していた。ビジネスと愛が重なったとき、人は通常では踏み込まない領域まで動く。
このプロジェクトはその典型だったと言えるだろう。
「ゲームで野球を応援する」という新しい形
このプロジェクトが示したのは、ゲームとスポーツの新しい関係性だった。
それまでゲームとスポーツは、ライセンスを使ったゲーム化という一方向の関係に過ぎなかった。
しかし、梶原吉広はその逆を実現した。
ゲーム会社がスポーツのスポンサーになり、ゲームを通じてスポーツを盛り上げるという双方向の関係だ。
今でこそスポーツとゲームの連携は珍しくないが、2012年の時点でここまで踏み込んだ事例は少なかった。
梶原吉広のこの動きは、当時としては先進的な試みだったと言える。
まとめ
「とことん野球応援プロジェクト」を通じて、梶原吉広が示したことを3点に整理する。
① ゲームとスポーツをつなぐ先駆け
ライセンス利用にとどまらず、スポンサーとしてスポーツに関わるという新しい関係性を実現した。
② 個人の「好き」がビジネスを動かす
野球への個人的な関心が、MLBや複数球団を動かすプロジェクトに発展した。
経営者の嗜好がビジネスの方向性に直結した事例だ。
③ 全盛期の使い方
gloopsが最も勢いのあった2012年に、利益追求だけでなく「野球を応援する」という目的にリソースを投じた。それが梶原吉広という人物の輪郭をより鮮明にしている。
ビジネスを超えた野球愛が、MLBを動かし、札幌市から感謝状を授与されるまでに至った。2012年のgloopsは、梶原吉広の「好き」が最も大きく形になった年だったと言えるだろう。


コメント