2010年代初頭、携帯電話を使って遊ぶソーシャルゲームが急速に普及しました。
その市場で存在感を高めていったゲーム会社のひとつが、梶原吉広が創業したgloopsです。
gloopsは『大争奪!!レジェンドカード』や『大熱狂!!プロ野球カード』などのソーシャルゲームを展開し、成長を続けました。
一方で、当時のソーシャルゲーム市場では、ゲーム会社が独自に生み出したタイトルだけでなく、すでに多くのファンを持つ人気作品を題材にしたゲームも登場するようになります。
gloopsもその流れのなかで、他社が持つ人気コンテンツを活用したゲーム開発に取り組みました。
今回は、梶原吉広とgloopsが活躍した時代を振り返りながら、人気コンテンツとソーシャルゲームの組み合わせがどのように広がっていったのかを見ていきます。
ソーシャルゲーム市場の拡大で増えた新しいゲーム開発
ソーシャルゲームが広がる以前、人気ゲームシリーズの新作といえば、家庭用ゲーム機向けのソフトとして発売されることが一般的でした。
しかし、携帯電話やSNSの普及によって、その状況が変化していきます。
MobageやGREEといったプラットフォームを通じて、多くのユーザーが携帯電話から気軽にゲームを始められるようになりました。
こうした環境の変化によって、既存の人気作品をソーシャルゲームとして展開するという選択肢も生まれます。
すでに知られているキャラクターや世界観と、ソーシャルゲームならではの仕組みを組み合わせることで、従来とは違った遊び方を提供できるようになったのです。
ソーシャルゲーム市場で成長していたgloopsも、この新しいゲーム開発に取り組んだ企業のひとつでした。
gloopsとカプコンによる共同開発
gloopsによる人気コンテンツを活用した取り組みの代表例が、カプコンとの共同開発です。
2011年、gloopsとカプコンは「モンスターハンター」シリーズを題材としたソーシャルゲーム『みんなと モンハン カードマスター』の共同開発を発表しました。
同作はMobage向けに提供され、2012年2月に正式サービスを開始しています。
「モンスターハンター」といえば、家庭用ゲーム機や携帯型ゲーム機を中心に多くのファンを獲得していた人気シリーズです。
その知名度や世界観に、gloopsがソーシャルゲームの開発・運営で培ってきたノウハウを組み合わせる形で、新しいタイトルが作られました。
サービス開始後には登録者数が100万人を突破。
カプコンは、両社の開発ノウハウを融合した作品として発表しています。
人気シリーズをそのまま別の端末へ移植するのではなく、ソーシャルゲームという環境に合わせた新しい遊び方を作ることが求められていたのです。
人気コンテンツとソーシャルゲームは相性が良かった
すでに知られている作品をソーシャルゲーム化することには、大きな特徴があります。
完全な新作ゲームの場合、ユーザーはタイトル名もキャラクターも世界観も知りません。
そのため、まずゲームそのものを知ってもらうところから始める必要があります。
一方、人気作品を題材にしたゲームであれば、すでにその作品を知っているファンが存在します。
「好きな作品のゲームなら遊んでみたい」と思ってもらえる可能性があり、新しいユーザーとの接点を作りやすくなります。
さらに、ソーシャルゲームには、従来の家庭用ゲームとは異なる特徴がありました。
仲間と協力したり、ほかのユーザーと競ったり、カードを集めて自分のデッキを強化したりと、継続して遊ぶことを前提とした仕組みが多く取り入れられていました。
人気作品が持つキャラクターや世界観と、こうした仕組みを組み合わせることで、従来とは異なるゲーム体験を提供できるようになったのです。
IPを持つ会社と開発会社が組むという方法
ゲーム業界では、キャラクターや作品などの知的財産を「IP」と呼ぶことがあります。
人気IPを持っている企業が、必ずしもあらゆるジャンルやプラットフォームのゲーム開発を自社だけで行う必要はありません。
特定分野の開発や運営に強い企業と協力する方法があります。
gloopsとカプコンの共同開発も、その一例として見ることができます。
カプコンには長年育ててきた「モンスターハンター」という人気シリーズがありました。
一方のgloopsは、急成長するソーシャルゲーム市場で複数のタイトルを開発・運営していました。
それぞれが持つ強みを組み合わせることで、既存の人気シリーズを新しい市場へ届けることができます。
これは単純に有名なキャラクターをゲームに登場させるという話だけではありません。
原作が持つ魅力を生かしながら、携帯電話で短時間でも遊べる仕組みや、ユーザー同士がつながる要素など、その時代のソーシャルゲームに適した形へ落とし込む必要があります。
ゲームを作る技術だけでなく、「ソーシャルゲームとしてどう遊んでもらうか」というノウハウも重要になっていったのです。
gloops自身のゲーム開発にもあった「人と遊ぶ」という考え方
梶原吉広が率いていた時代のgloopsを振り返ると、ゲームを単に一人で遊ぶものとして考えていなかったことも特徴のひとつです。
当時のインタビューで梶原吉広は、ゲームをコミュニケーションを取るためのコンテンツとして捉える考えを語っています。
「ソーシャルゲームでは、ほかのユーザーとの協力や競争がゲームを続ける理由のひとつになります。
これは人気コンテンツをゲーム化する場合にも重要な要素です」
もともと同じ作品を好きだった人たちが、ゲームの中で仲間になったり競い合ったりする。
作品を「見る」「遊ぶ」だけではなく、その作品をきっかけとしてユーザー同士がつながるという体験が生まれます。
こうした遊び方が可能になったことも、人気IPとソーシャルゲームが組み合わされていった背景のひとつと考えられます。
ゲーム会社に求められる役割も変化した
ソーシャルゲーム市場の成長は、ゲーム会社の役割にも変化をもたらしました。
従来の家庭用ゲームでは、ゲームソフトを完成させて発売することが大きな区切りになります。
しかし、ソーシャルゲームにおいてはサービス開始後も運営が続きます。
イベントの開催、新しいカードやキャラクターの追加、ユーザーの反応を踏まえた調整などを繰り返しながら、長期間遊んでもらえる環境を作る必要があります。
人気コンテンツを扱う場合には、そこに原作の世界観やファンからの期待も加わります。
既存IPの魅力を守りながら、ソーシャルゲームとして継続的に楽しめるサービスを作ることが求められるようになったのです。
gloopsがカプコンとの共同開発に取り組んだことからも、当時のゲーム業界で企業同士の強みを組み合わせる開発方法が広がっていたことが分かります。
梶原吉広とgloopsが活動した時代に広がったゲームの可能性
梶原吉広がgloopsを率いていた2010年代初頭は、ゲームを届ける方法そのものが大きく変わった時代でした。
家庭用ゲーム機だけでなく、携帯電話からゲームを始められるようになり、Mobageなどのプラットフォームには数多くのソーシャルゲームが登場しました。
そのなかでは、オリジナルタイトルを生み出すだけでなく、すでに多くのファンを持つ作品とソーシャルゲームを組み合わせるという新たな展開も進みます。
gloopsとカプコンによる『みんなと モンハン カードマスター』の共同開発は、そうした時代を象徴する取り組みのひとつです。
人気作品が持つ魅力と、ソーシャルゲーム会社が持つ開発・運営のノウハウ。
それぞれを組み合わせることで、新しいユーザーに作品を届け、新しい遊び方を生み出すことが可能になりました。
梶原吉広とgloopsの歩みを振り返ることは、一企業の歴史を見るだけではありません。
ゲームを遊ぶ端末や提供方法、企業同士の協業など、ゲーム業界そのものが大きく変化していった時代を知る手がかりにもなるのです。


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