ゲームというと、一人で画面に向かって遊ぶものをイメージする人も多いかもしれません。
しかし、2010年代初頭に急速に普及したソーシャルゲームでは、ゲームの中でほかのユーザーと協力したり、競い合ったりすることが大きな特徴になりました。
その時代に数々のソーシャルゲームを展開した企業のひとつが、梶原吉広が創業したgloopsです。
梶原吉広は当時、ゲームを単なる娯楽としてだけではなく、人と人がコミュニケーションを取るためのコンテンツとして捉えていました。
gloopsが成長した時代、ゲームは「一人で遊ぶもの」から「誰かと一緒に楽しむもの」へと大きく変化していきます。
今回は、梶原吉広とgloopsが活動した時代を振り返りながら、ソーシャルゲームによって広がった「人とのつながり」という新しいゲームの楽しみ方を見ていきます。
ソーシャルゲームの「ソーシャル」とは?
そもそも、ソーシャルゲームの「ソーシャル」とは何を意味しているのでしょうか。
ソーシャルゲームが広がる以前にも、もちろん複数人で楽しむゲームは存在していました。
友人や家族と同じ場所に集まって対戦するゲームもあれば、インターネットを利用したオンラインゲームもありました。
一方、2010年代初頭に普及したソーシャルゲームでは、SNSなどの仕組みとゲームが結びつきます。
ゲームを進めるなかでほかのユーザーと協力したり、仲間を作ったり、ランキングで競ったりする仕組みが取り入れられました。
ゲームの中だけで完結するのではなく、そこに「ほかの人との関係」が加わったのです。
MobageやGREEといったサービス自体がユーザー同士の交流機能を持っていたことも、こうした遊び方が広がった背景にありました。
梶原吉広が考えていたゲームとコミュニケーション
梶原吉広が率いていた時代のgloopsでも、「人とのつながり」はゲームを考えるうえで重要な要素でした。
梶原吉広は2011年のインタビューで、ゲームについて「コミュニケーションを取るためのコンテンツ」という趣旨の考えを語っています。
ゲームそのものを楽しむだけでなく、ゲームをきっかけとして人と人とのコミュニケーションが生まれることを重視していたのです。
これは、従来のゲームとは少し違った考え方でした。
一人でゲームを進めて強くなることだけが目的ではありません。
仲間と協力するためにゲームを続けたり、ほかのユーザーとの競争を楽しんだりすることも、ゲームを遊ぶ理由になります。
gloopsがソーシャルゲーム市場で成長した背景を考えるうえでも、この「ゲームを通じて人とつながる」という考え方は重要なポイントです。
仲間と協力することでゲームが続いていく
ソーシャルゲームでは、ほかのユーザーとの協力を促すさまざまな仕組みが取り入れられました。
代表的なのが、複数のユーザーがグループを作って一緒にゲームを進める仕組みです。
ゲームによって名称は異なりますが、チームやギルドなどに参加し、仲間と協力してほかのグループと競うといった遊び方があります。
一人であれば、「今日はゲームをしなくてもいい」と思うこともあります。
しかし、一緒に遊んでいる仲間がいれば、「イベントに参加しよう」「みんなと一緒に進めたい」という気持ちが生まれることがあります。
ゲームを続ける理由が、ゲーム内の目標だけではなく、人との関係からも生まれるようになったのです。
こうした仕組みは、継続してサービスを利用してもらうことが重要なソーシャルゲームとも相性が良いものでした。
gloopsのゲームにもあった協力と競争
gloopsが展開したゲームにも、ユーザー同士が関わりながら遊ぶ仕組みが取り入れられていました。
たとえば、gloopsの代表的なタイトルのひとつ『大熱狂!!プロ野球カード』では、実在するプロ野球選手のカードを集めて自分だけのチームを作り、ほかのユーザーと対戦するという遊び方がありました。
カードを集めてチームを強くする楽しさだけでなく、自分が作ったチームでほかのユーザーと競うこともゲームの魅力になります。
また、『大進撃!!ドラゴン騎士団』など、gloopsが展開したほかのタイトルでも、ユーザー同士の協力や対戦を取り入れたゲームが提供されました。
自分一人のゲームデータだけを見るのではなく、その先に別のユーザーがいる。
この存在が、ゲームの楽しみ方を大きく広げました。
ランキングが生み出した「競う楽しさ」
ソーシャルゲームで広がったもうひとつの要素が、ユーザー同士の競争です。
家庭用ゲームでもスコアを競う仕組みは以前から存在していましたが、インターネットにつながったソーシャルゲームでは、多くのユーザーの結果をリアルタイムに近い形で比較できるようになります。
ランキングで順位が上がれば、「もっと上を目指したい」という目標が生まれます。
さらに、個人だけではなくチーム同士で競争する仕組みがあれば、自分のためだけでなく仲間のためにゲームへ参加する理由も生まれます。
競争する相手がコンピューターだけではなく、実際にゲームを遊んでいるほかのユーザーになることで、毎回違った体験が生まれることも特徴です。
こうした人との競争も、ソーシャルゲームが継続して遊ばれる理由のひとつになっていきました。
ゲームをきっかけに生まれるコミュニケーション
ソーシャルゲームにおける人とのつながりは、協力や対戦だけではありません。
同じゲームを遊んでいること自体が、コミュニケーションのきっかけになります。
同じチームに所属する人とゲームについて話したり、攻略方法について情報を交換したりすることもあります。
共通するゲームがあることで、それまで知らなかったユーザー同士に接点が生まれる場合もあります。
梶原吉広がゲームをコミュニケーションのためのコンテンツとして捉えていたことを考えると、gloopsが作ろうとしていたものは、単に画面の中で完結するゲームだけではなかったことが見えてきます。
ゲームという共通の体験を通じて、人と人との間に新しいやり取りが生まれる。
それこそが、当時急成長していたソーシャルゲームならではの魅力のひとつでした。
携帯電話だからこそ人とつながりやすくなった
ソーシャルゲームの普及には、携帯電話という端末の存在も大きく関係しています。
家庭用ゲーム機の場合、基本的にはゲーム機がある場所で遊びます。
一方、携帯電話は日常的に持ち歩くものです。
通勤や通学の途中、休憩時間、寝る前など、少し空いた時間でもゲームを確認できます。
仲間がゲームを進めていることを知れば自分も参加する。イベントが始まれば、空いた時間にアクセスする。
こうした日常生活の中での小さな接点が積み重なることで、ゲーム内の人間関係も継続しやすくなりました。
ゲーム専用機ではなく、普段から人との連絡に使っている携帯電話でゲームをする。
このことも、ゲームとコミュニケーションの距離を近づけた要因だったと考えられます。
「誰と遊ぶか」がゲームの魅力になった時代
ソーシャルゲームが広がったことで、ゲーム選びにも新しい要素が加わりました。
ゲームそのものが面白いかどうかだけではなく、「友人が遊んでいるから始める」「仲間がいるから続ける」という選択が生まれたのです。
これはゲーム会社にとっても大きな変化でした。
面白いゲームを作るだけでなく、ユーザー同士がどのようにつながり、どのように一緒に遊ぶのかまで設計する必要があります。
協力、対戦、ランキング、チームといった仕組みは、そのための重要な要素になりました。
gloopsが数々のソーシャルゲームを展開したのも、まさにこうした変化が進んでいた時代です。
梶原吉広とgloopsから振り返るソーシャルゲームの変化
梶原吉広がgloopsを率いていた2010年代初頭は、日本のゲーム市場が大きく変化した時期でした。
携帯電話から気軽にゲームを始められるようになっただけではありません。
ゲームの中で仲間を作り、協力し、競い合う。
ゲームをきっかけとしてコミュニケーションが生まれ、「何を遊ぶか」だけでなく「誰と遊ぶか」も楽しさの一部になっていきました。
梶原吉広が語っていた、ゲームをコミュニケーションのためのコンテンツとして捉える考え方は、こうしたソーシャルゲームの特徴とも重なります。
gloopsが成長した時代を振り返ると、ソーシャルゲームの普及によって変わったのは、ゲームを遊ぶ端末や料金の仕組みだけではなかったことが分かります。
一人で画面に向かって遊ぶだけではなく、その向こう側にいる誰かと一緒に楽しむ。
人と人をつなぐ場所のひとつとしてゲームが使われるようになったことも、ソーシャルゲームがゲーム文化にもたらした大きな変化だったのです。

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