ゲームを遊ぶなら、最初にソフトを買う。
長い間、それはごく自然なことでした。
しかし、ソーシャルゲームが急速に広がった時代には、ゲームを始めるまでの仕組みそのものが変わっていきます。
その象徴の一つが「基本無料」という考え方です。
まずは無料でゲームを始めてもらい、必要に応じてゲーム内のアイテムなどに料金が発生する。
現在のスマートフォンゲームでは珍しくありませんが、ソーシャルゲーム市場の拡大期には、このモデルがゲームとユーザーの関係を大きく変えていきました。
梶原吉広が創業したgloopsも、その変化の中心にあったソーシャルゲーム企業の一つです。
「買ってから遊ぶ」までにあった壁
家庭用ゲームでは、ゲーム機やソフトを購入してからプレイを始めます。
欲しい作品であれば迷わず購入する人もいる一方、「少し気になる」という程度では購入まで進まないケースもあります。
価格を確認し、本当に遊びたいかを考えてから購入する。
ゲームを始める前に、一つの判断が必要でした。
基本無料のソーシャルゲームは、この順番を変えます。
先に遊び始めることができるからです。
面白いかどうか分からない段階で料金を支払うのではなく、まずサービスへ参加する。
この違いによって、ユーザーにとってゲームへの入口は大きく広がりました。
無料だから生まれた「参加しやすさ」
ゲームを無料で始められることには、単純な価格以上の意味があります。
友人から勧められたときにも、「とりあえずやってみる」という選択がしやすくなります。
広告でタイトルを知ったときも、興味を持てばそのままサービスへアクセスできます。
こうした小さなきっかけからゲームに参加する人が増えれば、サービス内にいるユーザーも増えていきます。
特に、ほかのユーザーと協力したり競ったりするソーシャルゲームでは、参加者が多いこと自体がゲーム体験につながります。
基本無料というモデルは、料金の仕組みだけでなく、多くのユーザーをゲームへ集めるための入口としても機能しました。
全員が同じ金額を払う必要がなくなった
買い切り型のゲームでは、同じソフトを買うユーザーは基本的に同じように代金を支払います。
一方、基本無料のゲームでは遊び方によって支払う金額が異なります。
無料の範囲で楽しむ人もいれば、よりゲームを楽しむためにアイテムなどを購入する人もいます。
DeNAが運営するMobageでも「モバコイン」と呼ばれるポイントが有料コンテンツの利用に使われていました。
gloopsは、そうしたプラットフォーム上で多くのソーシャルゲームを提供していきます。
ユーザー全員に最初から同じ商品を販売するのではなく、まず多くの人にサービスへ参加してもらい、その後の利用に応じて収益が発生する。
ゲーム会社のビジネスモデルは大きく変化しました。
継続して遊んでもらうことが重要になる
基本無料のモデルでは、ゲームをインストールしたり登録したりしてもらうだけでは十分ではありません。
ユーザーがすぐに遊ばなくなれば、その後サービスを利用してもらえる可能性も低くなります。
そのため、企業側には「どうやって始めてもらうか」だけでなく、「どうやって続けてもらうか」という視点も必要になります。
イベントを企画する。
新しい遊びを追加する。
仲間と楽しめる要素を用意する。
ソーシャルゲームの運営では、ユーザーとの関係を継続させることがビジネスそのものに直結するようになりました。
この点は、完成したゲームソフトを販売した時点で売上が発生するモデルとの大きな違いです。
gloopsが成長した市場にあった新しい仕組み
梶原吉広がgloopsを率いていた時期、Mobageをはじめとするソーシャルゲームのプラットフォームには多くのユーザーが集まっていました。
そこで求められたのは、単にゲームを一本作って販売する力ではありません。
多くの人に参加してもらい、継続して楽しめるサービスを作り、そのサービスを運営し続ける力です。
gloopsはこうした市場で複数のタイトルを展開し、2011年にはMobage AwardのPartner of the Yearにも選ばれました。
その実績を見ても、当時のソーシャルゲーム市場の仕組みに適応し、多くのユーザーを集めるゲームを提供していたことが分かります。
ビジネスモデルがゲームの作り方も変えた
基本無料という仕組みは、料金の取り方を変えただけではありません。
ゲーム会社が何を考える必要があるのかも変えました。
ユーザーはどこでゲームを始めるのか。
どのような理由で続けるのか。
どんな瞬間にゲームから離れてしまうのか。
サービスを継続するほど、こうした一人ひとりの行動が重要になります。
現在では基本無料のスマートフォンゲームは身近な存在ですが、その背景にはソーシャルゲーム市場が急成長した時代があります。
梶原吉広とgloopsの歩みを振り返るとき、ヒットタイトルや企業の成長だけを見るのではなく、「ゲームでお金を生み出す仕組み自体が変わっていた」という点に注目すると、当時の市場がより立体的に見えてきます。
ソーシャルゲームが変えたのは、遊ぶ場所や端末だけではありません。
「ゲームを始める前に買う」という常識から、「まず遊び、その後の体験に応じて利用する」という新しい関係へ。
その変化もまた、gloopsが成長した時代を象徴するものの一つです。

