ゲームをするなら、テレビの前に座ってある程度まとまった時間を使う。
かつてはそんな遊び方が一般的でした。
ところが携帯電話でソーシャルゲームを遊ぶ人が増えると、ゲームに使われる時間の形が変わっていきます。
電車に乗っている数分。
昼休みの少し空いた時間。
誰かを待っている間。
それまでならゲームとは関係がなかった短い時間にも、携帯電話を開いてゲームを遊べるようになりました。
梶原吉広が創業したgloopsがソーシャルゲーム市場で成長した時代は、ゲームが人々の日常生活へ入り込んでいった時代でもあります。
今回は「短時間で遊べる」という特徴から、ソーシャルゲームがなぜ多くの人に受け入れられたのかを考えます。
ゲームのために時間を作らなくてもよくなった
家庭用ゲームでは、ゲーム機が置いてある場所で遊ぶことが一般的でした。
電源を入れ、ソフトを起動し、ある程度まとまった時間を使って遊ぶ。
もちろん短時間だけ遊ぶこともできますが、「ゲームをするための時間」を確保する意識が必要です。
携帯電話のソーシャルゲームでは、その感覚が薄れていきます。
普段から持ち歩いている端末を開けば、その場ですぐにゲームへアクセスできるからです。
ゲームのために生活の予定を変えるのではなく、生活の中にある小さな空き時間へゲームを入れる。
この変化は、ゲームとユーザーの距離を大きく縮めました。
数分でも行動できるゲームとの相性
短い時間で遊ぶためには、ゲーム側もその使われ方に合っている必要があります。
一回のプレイに長い時間が必要であれば、電車を待つ数分間では遊びにくくなります。
ソーシャルゲームでは、クエストを一つ進める、アイテムを確認する、仲間の状況を見るといった小さな行動を積み重ねられるゲーム設計が広がりました。
そのため、「今日は一時間ゲームをしよう」と予定を立てなくても遊べます。
朝に少しアクセスする。
昼にもう一度確認する。
夜にも遊ぶ。
一回あたりの時間が短くても、一日の中でゲームと接する機会は何度も生まれます。
これは、それまでのゲームとは異なる接点の作り方でした。
携帯電話だから生活のすぐそばにあった
この遊び方を支えた最大の存在の一つが携帯電話です。
ゲーム専用機は遊びたいときに用意するものですが、携帯電話は連絡手段として日常的に持ち歩きます。
その端末の中にゲームが入ることで、ゲームも常にユーザーの近くに存在するようになりました。
ソーシャルゲームが普及した時期には、携帯電話そのものがメールやインターネット、各種サービスを利用する端末として急速に進化していました。
その流れの中にゲームも加わります。
「ゲームを持ち歩く」というより、「いつも持っているものの中にゲームがある」。
この違いが、遊ばれる時間や場所を広げていきました。
gloopsのゲームが登場した時代
梶原吉広が立ち上げたgloopsは、こうした環境の中でソーシャルゲーム事業を成長させました。
gloopsはMobage上でバトル系やスポーツ系など複数のソーシャルゲームを開発・運営しています。
当時のMobageには多くのユーザーが集まり、携帯電話を通じてさまざまなゲームへアクセスできる環境が形成されていました。
ゲーム会社にとっても、店舗でソフトを販売するのとは違う形でユーザーと接する市場です。
新しいゲームを知ったユーザーが、その場でアクセスして遊び始める。
そして、一度遊んだ後も日常の空き時間に再びゲームへ戻ってくる。
ソーシャルゲームは、生活の中に何度も接点を作れるサービスへ変わっていきました。
「長く遊ぶ」だけが熱中ではない
ゲームへの熱中というと、何時間も続けて遊ぶ姿を想像することがあります。
しかし、ソーシャルゲームでは別の形の熱中も生まれました。
一回のプレイは数分でも、毎日アクセスする。
仲間の状況が気になって確認する。
新しいイベントが始まればゲームを開く。
こうした小さな接点が積み重なれば、ゲームは日常の習慣に近づいていきます。
長時間遊んだかどうかだけではなく、「どれだけ頻繁にゲームを思い出すか」という関係が生まれたのです。
これは継続的にサービスを提供するソーシャルゲームとの相性が良い仕組みでした。
スマートフォンにも受け継がれた遊び方
現在、スマートフォンでゲームを遊ぶときにも、短時間だけアプリを開くことがあります。
移動中に少し進める。
ログインだけする。
空いた時間に一つのステージを遊ぶ。
こうした行動は今では珍しくありません。
しかし、その背景をたどると、携帯電話でソーシャルゲームが広がった時代に行き着きます。
ユーザーがゲームのために時間を用意するだけでなく、ゲーム側がユーザーの生活に合わせる。
この発想が、モバイルゲームの大きな特徴になりました。
梶原吉広とgloopsが活躍した時代を振り返るとき、企業規模やヒット作だけではなく、人々の「ゲームに使う時間」が変わったことにも注目する必要があります。
ソーシャルゲームが広げたのは、新しいゲームジャンルだけではありません。
数分の空き時間まで遊びの時間へ変えてしまう、新しいゲームとの付き合い方でした。
その変化が積み重なった先に、いつでもスマートフォンからゲームを開ける現在の風景があります。
