2010年代初頭、携帯電話を使ったソーシャルゲームが急速に広がりました。
その市場で数々のタイトルを展開し、成長した企業のひとつが、梶原吉広が創業したgloopsです。
当時のソーシャルゲームには、家庭用ゲームソフトとは大きく異なる特徴がありました。
ゲームを完成させて発売すれば終わりではなく、サービスを開始した後もユーザーの反応を確認しながら、継続的にゲームを改善していく必要があったことです。
gloopsでも、ユーザーの行動データを分析し、その結果をゲームの企画や運営に生かす取り組みが行われていました。
今回は梶原吉広がgloopsを率いていた当時を振り返りながら、データ分析と継続的なゲーム運営がソーシャルゲームにどのような変化をもたらしたのかを見ていきます。
「発売して終わり」ではないソーシャルゲーム
家庭用ゲームが中心だった時代、ゲーム会社にとって大きな目標のひとつは、決められた発売日に向けてゲームを完成させることでした。
もちろん発売後に追加コンテンツなどが提供されることもありますが、基本的には完成した商品をユーザーが購入するという形です。
一方、ソーシャルゲームではゲームを公開した日がスタートになります。
サービス開始後も新しいイベントを開催したり、アイテムを追加したり、ゲームバランスを調整したりしながら運営を続けます。
ユーザーに長く遊んでもらうためには、「どんな機能が使われているのか」「どこで遊ぶのをやめてしまうのか」「どのようなイベントが支持されているのか」といった反応を把握することも重要になります。
そこで大きな役割を果たすようになったのが、ゲームから得られるデータでした。
gloopsが取り組んでいたユーザー行動の分析
gloopsでは、ゲームを運営するなかで得られるさまざまな情報を分析し、サービスの改善につなげていました。
当時のgloopsに関する講演では、ゲームの運営チームとは別に分析を専門とするスタッフが配置され、ユーザーの行動を分析していたことが紹介されています。
ソーシャルゲームでは、多くのユーザーが毎日のようにサービスを利用します。
そのため、「何人がゲームを利用しているか」という数字だけでなく、継続して利用しているユーザーの割合や、ゲーム内でどのような行動が行われているのかなど、さまざまなデータを確認できます。
こうした情報を分析することで、運営側の感覚だけでは見つけにくい課題も発見できるようになります。
たとえば、運営側では魅力的だと考えていた機能でも、実際にはほとんど利用されていないかもしれません。
反対に、想定以上に多くのユーザーが利用している機能が見つかることもあります。
ユーザーの実際の行動を見ることによって、次にどこを改善すべきなのかを考えられるようになったのです。
数字を見るだけではゲームは良くならない
データ分析というと、数字を集めて確認することそのものが目的のように感じるかもしれません。
しかし、重要なのは集めたデータをゲームの改善につなげることです。
たとえば、新しいイベントを実施した後にユーザーの利用状況を確認すれば、そのイベントがどの程度受け入れられたのかを判断する材料になります。
ゲームを始めたユーザーが短期間で離れていることが分かれば、序盤の難易度や説明方法などに問題がないかを考えるきっかけにもなります。
つまり、
「ゲームを運営する」
↓
「ユーザーの行動を見る」
↓
「課題や変化を見つける」
↓
「ゲームを改善する」
↓
「再びユーザーの反応を見る」
という流れを繰り返していくことになります。
gloopsでも、こうした分析結果を企画や運営へフィードバックし、ゲームを改善するために活用していました。
ゲーム制作が、一度完成品を作る仕事から、ユーザーの反応を見ながらサービスそのものを育てていく仕事へと変わっていったことが分かります。
多くのユーザーがいるからこそデータが重要になる
ソーシャルゲーム市場が成長すると、一つのゲームを利用するユーザーの数も増えていきました。
gloopsが手掛けたタイトルのなかにも、多くのユーザーを獲得したゲームがあります。
利用者が増えれば、ユーザーの遊び方も一様ではなくなります。
毎日長時間遊ぶ人もいれば、通勤や通学などの空いた時間だけ遊ぶ人もいます。
仲間との交流を楽しむ人もいれば、カードを集めたり自分のチームを強くしたりすることを目的にする人もいます。
すべてのユーザーに直接意見を聞くことはできません。
そこで、実際のゲーム内でどのような行動が起きているのかをデータとして把握することが重要になります。
ユーザー数が増えれば増えるほど、開発者自身の感覚だけで全体を捉えることは難しくなります。
多くの人に利用されるサービスを運営するために、データを根拠として状況を把握する考え方が必要になっていったのです。
データと人の感覚を組み合わせるゲーム運営
一方で、数字だけですべてを判断できるわけではありません。
ゲームはユーザーが「楽しい」と感じることが重要なサービスです。
ある機能の利用率が高いことが分かっても、なぜその機能が支持されているのかまでは数字だけでは分からない場合があります。
反対に利用率が低いからといって、その機能自体に魅力がないとは限りません。
ゲーム内で見つけにくい、使い方が分かりにくいなど、別の原因が隠れている可能性もあります。
そのため、データから見つけた変化や課題を、ゲームを作る人たちがどのように解釈するかも重要です。
企画、開発、運営、分析といった異なる役割の人たちが情報を共有し、次の施策につなげていく。
こうした仕事の進め方も、継続的にサービスを提供するソーシャルゲームならではの特徴といえます。
急成長するgloopsを支えた運営という仕事
梶原吉広が率いていた時代のgloopsは、短期間で複数のソーシャルゲームを展開し、会社の規模も拡大していきました。
ゲームの利用者が増え、複数タイトルを同時に運営するようになれば、それだけサービスを維持・改善する仕事も増えていきます。
新しいゲームを作ることだけがゲーム会社の仕事ではありません。
すでに遊んでいるユーザーに楽しみ続けてもらうため、既存タイトルを継続的に改善していくことも重要です。
特にソーシャルゲームでは、イベントや新しいコンテンツが定期的に追加されます。
ユーザーがどのように反応したのかを確認し、次の企画へ生かしていくサイクルを続けることで、一つのゲームを長期間運営できる可能性が生まれます。
gloopsがデータ分析をゲーム運営に取り入れていた背景には、こうしたソーシャルゲーム特有の事業構造がありました。
梶原吉広とgloopsの時代に変わったゲームの作り方
梶原吉広とgloopsがソーシャルゲーム市場で活動していた2010年代初頭は、ゲームの作り方や運営方法が大きく変化した時期でした。
ゲームを作って発売するだけではなく、サービス開始後もユーザーと向き合いながら改善を続ける。
そのために、実際のユーザー行動をデータとして把握し、次の企画や改善につなげていく。
現在のスマートフォンゲームでは当たり前に感じられるこうした考え方も、ソーシャルゲーム市場が急速に成長した時代に重要性を増していきました。
gloopsもまた、その変化のなかでゲームの企画・開発だけではなく、運営と分析を重視していました。
梶原吉広とgloopsの歩みを振り返ると、ソーシャルゲームの成長とは単に「携帯電話でゲームを遊ぶ人が増えた」という変化だけではなかったことが分かります。
ユーザーの反応を見ながらサービスを改善し、一つのゲームを継続的に育てていく。
そんな現在にもつながるゲーム運営の考え方が広がったことも、ソーシャルゲーム時代がゲーム業界にもたらした大きな変化のひとつだったのです。


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